DJI 「Zenmuse L1」のフライトテストを神戸清光が実施。

ーリアルタイムに点群データを表示させながら、フライトする時代へ。

発売開始直後から、そのパフォーマンスが話題となっているDJI社製「Zenmuse L1」。
その「Zenmuse L1」のテストフライトを神戸清光が行った。本記事では、そのレポートをご紹介する。

DJI Zenmuse L1を搭載しMatrice300 RTKでテスト飛行を行う様子。

▲テスト飛行を行う様子。

リアルタイムに点群データを表示させる「Zenmuse L1」。

テストフライトのレポートをお伝えする前に、改めて「Zenmuse L1」についてご紹介しよう。
本製品はLidarであり、いわゆるレーザースキャナだ。ドローン「Matrice300 RTK」に本製品を搭載することで使用可能となる。「ドローンをフライトさせながら、手元のプロポにはリアルタイムで計測範囲の様子が点群データとして表示される。」を実現するのが本製品の大きな魅力であり、特長だ。
(製品の細かなスペックについてはこちらの製品ページ(http://www.kobeseiko.co.jp/zenmuse-L1.html)を確認していただきたい。)

「百聞は一見に如かず」ではないが、当日の計測データからZenmuse L1のそのパフォーマンスの高さを感じていただこう。

約20ヘクタールの敷地を高度約20メートル、20分程度のマニュアルフライトで点群化する。点群解析は生データをPCに取り込んで3クリック、わずか15分程度で完了だ。

▲約20ヘクタールの敷地を高度約20メートル、20分程度のマニュアルフライトで点群化する。点群解析は生データをPCに取り込んで3クリック、わずか15分程度で完了だ。

▲プロポにリアルタイムで点群が表示されていく様子。

Zenmuse L1を装着したMatrice300 RTKとプロポ。

▲Zenmuse L1を装着したMatrice 300 RTKとプロポ。

「Zenmuse L1」×地上型レーザースキャナ=更に高品質な成果物へ。

L1単体でも高いパフォーマンスを発揮するが、未知の可能性が感じられるのが地上型レーザースキャナとの組み合わせでの使用だ。本テストフライトの実証では、ライカ社製世界最小3Dレーザースキャナ「BLK360」での同現場計測データを重ねたデータの作成も行った。BLK360での計測データは弊社小野練習場配置の対空標識を使って3次元化、Zenmuse L1の計測データは弊社小野練習場の基準点を用いたRTK方式でフライトして3次元化を行った。「地上型レーザースキャナ」と「ドローン」という異なるハードでの計測だったが、同一座標系の計測で、それぞれの計測結果をぴったり重ねることができた。

ライカ社製世界最小3Dレーザースキャナ「BLK360」で計測した同現場データ。しっかりした点群で構築されているが、地上型レーザースキャナは屋根などの高所の再現に工夫が要ることが分かる。 ▲「ZenmuseL1」の点群データを重ねた様子。屋

▲ライカ社製世界最小3Dレーザースキャナ「BLK360」で計測した同現場データ。しっかりした点群で構築されているが、地上型レーザースキャナは屋根などの高所の再現に工夫が要ることが分かる。

「ZenmuseL1」の点群データを重ねた様子。屋根の色や形状が合わさることで、より忠実に現場の点群化が可能となる。

▲「Zenmuse L1」の点群データを重ねた様子。屋根の色や形状が合わさることで、より忠実に現場の点群化が可能となる。

——細部まで点群化。

上空20mからの撮影にも関わらず、Zenmuse L1によって地上の細部まで点群化されている。その様子も見ていこう。

構造物が綺麗に表示されている。また、一般的にレーザースキャナが不得意とする黒色も捉えることが出来た。

▲構造物が綺麗に表示されている。また、一般的にレーザースキャナが不得意とする黒色も捉えることが出来た。

太陽光パネルも地上型レーザースキャナに引けを取らないくらいに美しく表現されている。

▲太陽光パネルも地上型レーザースキャナに引けを取らないくらいに美しく表現されている。

国産点群処理ソフトを組み合わせる。

福井コンピュータ社製点群処理システム「TREND POINT」で本テストフライトデータを処理する実証も行った。縦横断作成や、地表面の抽出と等高線作成も簡単に行うことが出来ることが分かった。

地表面を抽出し、等高線の作成を行った。作業担当者曰く「ストレスなく出来た。」とのこと。

▲地表面を抽出し、等高線の作成を行った。作業担当者曰く「ストレスなく出来た。」とのこと。

▲縦横断作成も作成できる。「こちらの作業も簡単にできた」と作業担当者は話していた。

▲縦横断作成も作成できる。「こちらの作業も簡単にできた」と作業担当者は話していた。

地表面の抽出で分かる、「こんなに撮れているのか」ということ。

Zenmuse L1で撮影した写真と点群の比較も見てみよう。非常に鮮やかな色彩で点群が構成されていること、写真が高品質であることが感じられる。また地表面の抽出を行ったデータも併せると、ドローン搭載型のレーザースキャナがあまり得意としない木の下までしっかり表現されていることが分かる。Zenmuse L1のパフォーマンスの高さが体現されているデータだ。

写真データ。非常に鮮やかだ。

▲写真データ。非常に鮮やかだ。

点群データ。写真データのもつ鮮やかな色彩がしっかり反映されている。

▲点群データ。写真データのもつ鮮やかな色彩がしっかり反映されている。

地表面の抽出後。ドローンで撮影したとは思えないほど地表面が残っている。今回は構造物メインのフライトとしたため、カメラ角がついているが地表面メインのフライトであれば真下を向けて地形追従させることでより詳細な地表面データが取得可能だ。

▲地表面の抽出後。ドローンで撮影したとは思えないほど地表面が残っている。今回は構造物メインのフライトとしたため、カメラ角がついているが地表面メインのフライトであれば真下を向けて地形追従させることでより詳細な地表面データが取得可能だ。

ドローンによる3次元測量が
「Zenmuse L1」で大きく変わる。

 Lidar技術を応用した製品は本製品が初めてではない。1990年代からLidar技術が測量のために発達していったと言われ、同様の製品「LiAir(GreenValley社製)」のレポートも神戸清光からみなさまにお届けしている。(「LiAir」のKSIレポートはこちらから→http://www.kobeseiko.co.jp/ksi_report01.html

 しかし、従来の製品を想像していると良い意味で期待を裏切られるのが、Zenmuse L1だ。神戸清光の実証担当者たちも自分たちの想像を遥かに上回ったという。ご紹介したデータを通して、そのパフォーマンスの高さをみなさんも感じていただけただろう。何よりも「リアルタイムに点群が表示される」というポイントが大きな魅力であり、特長だ。

 従来のレーザードローンやフォトグラメトリ方式とは異なりフライト後すぐに点群確認ができる点はその場で確認できることにより再測の手間を省くことが出来る。これは地上型レーザースキャナ式にもない大きなメリットだ。検証点などを使い精度の担保を行う必要はあるが、画期的なシステムである。都市部や人口密集地ではドローン測量が難しい状況が続き、地上型レーザースキャナでの計測が主流であることに当面変化はないだろう。しかしながら、高いスペックをもったドローンと地上型レーザースキャナがまるで競い合うように登場することで変化することがあることも予感される。

 今回は比較的低高度で、マニュアルフライトを行うことで、地形計測を行った。実際の自律飛行による精度検証の結果も行っているので、引き続き掲載していく。

今までの「ドローンだったらこれくらい」という従来の感覚をアップグレードしてくれる、Zenmuse L1はそんな製品だ。カタログや、動画や本記事だけで本製品の魅力を全て伝えることは難しい。是非実機にも触れていただき、その魅力を知っていただくことをお勧めする。当社小野練習場では、随時機体のデモンストレーションを行っているので、ご希望があればぜひお問い合わせいただきたい。 http://www.kobeseiko.co.jp/drone_field_school.html

測量に関して豊富な知識をもつ営業担当たちが神戸清光の実証実験を日々行っている。その日々の実証実験によってまた彼らの知識が蓄えられているわけだが、今回のZenmuse L1の実証ではいつもよりさらに興奮している様子が見えた。それだけ革新的な製品が誕生したのだと感じられる。

また、Zenmuse L1を搭載するMatrice 300 RTKは、L1用に合わせて新発売された製品ではないのにも関わらず、既存のプロポに点群が表示される仕様に出来ていることにも驚いた。DJI社はいったいどこまで見据えていたのだろうか。

どのような製品がどのように登場するのか。
これからも楽しみだ。

(株)神戸清光 広報チーム