実証事例 LiAir V70

実施場所:能勢高原ドローンフィールド(大阪府能勢町)
実施日:2021年2月6日(土)

神戸清光が、LiAirの実証実験を行った。
ドローンを使用した測量は今や主流だが、LiAirを搭載することによって高品質なレーザースキャナ×ドローン測量が可能となる。測量からデータの吐き出しまでをスムースに実現する実力を持つが、まだまだ主流ではない技術だ。当日の実証の様子をお伝えする。

「あの撮影時間でこのデータが取れるのか」という驚き

まずは撮影データを見ていただこう。
「LiAir」で撮影後、点群処理ソフトウェア「LiAcquire web &LiGeoreference」を使用し、福井コンピュータ社製「TRENDPOINT」で取り出したものだ。
私たち神戸清光が第一に体感したのは「あの撮影時間でこのデータが取れるのか」という驚きだった。
“あの時間”というのは、約10分ほどの飛行時間だ。

今回撮影したデータ

(Googleマップより) 

航空写真と比べてもそのデータの質の高さが分かる。

等高線を表示させた
状態

三角網を表示させた
状態

神戸清光はユーザーへ「新しいものを見せていく」
その一つがGreenValley社製「LiAir」である

「測量」は様々な技術の登場によって変化してきた。その変化の理由の一つが、レーザースキャナ技術の進歩だろう。高品質なレーザースキャナを搭載したトータルステーションが発売されたり、高価だったレーザースキャナの概念を打ち破るように安価で小型のレーザースキャナが登場したことも記憶に新しい。次にキーワードになるのが「LiDAR」だろう。その技術は1990年代を中心に測量のために発達していったと言われている。それから20年以上経った現在では、自動運転技術に応用されたり、スマホやタブレットにも搭載され始めた。iPhone12に搭載されたことからさらにより多くの人々に身近になってきた。

代表の走出は言う。「新しいものを見せていく」が弊社の信念である。

今回実証実験を行ったGreenValley社製「LiAir V」の他にも、DJI社製「LivoxLiDAR」も発売当初から扱ってきた。特に「LivoxLiDAR」はセンサー部分のみと、かなりニッチな商品だが、購入するユーザーは少なくない。高品質で安価という、そのコストパフォーマンスの良さがユーザを引き付ける。そして、今回実証実験を行うのはドローン×レーザースキャナで測量を行うGreenValley社製「LiAir」。つまり、ドローン搭載用のLiDARである。この製品の魅力の一つもまた、高品質で安価ということだ。では、当日の様子をご紹介していこう。

測量の様子

当日は無風・晴天の中で測量が行われた。絶好のドローン日和だ。
座標を取るためソキア製「iX1003」を用いたTS測量班と、DJI製「Matrice300RTK」を操作するドローン班に別れて、撮影の準備を行う。座標と楕円高をTSで把握したら、いよいよLiAir Vを搭載したドローンの実飛行である。対空標識は測量用三脚に設置。GNSS受信機(Harxon社製)・D-RTK(DJI社製高性能GNSS)を各1点ずつ設置した。

設置した対空標識

対空標識をセッティングする様子

DJI製高性能GNSS D-RTK 2

Harxon社製GNSS受信機

実証:メーカー推奨の「5分待って、測量開始」という動作に対し、     「5分待たずに、測量開始」でデータの質は落ちるのか?

測量を開始するために、メーカーは上記のような動作を推奨している。
「5分待つ」という目的は、搭載されているIMUを安定させるためだという。しかしながら、本体自体にIMUの状態を確かめる部分は付いていない。今回実証するのは、順序②の「5分待つ」が本当に必要か否かということだ。ちなみに測量に必要とした時間は、順序③~⑤までで約10分ほどだった。ちなみにこの現場での実証実験の結果は「大差はない」だった。

今回のLiAir Vでの実証実験で「撮影の設定」の重要さにも気付く。LiAir Vは「飛行を開始してからシャッターを切る」という設定を選ぶことが出来るのだが、本当に撮影できているかを操縦者が確認することが出来ない。ドローンが飛行を開始=空中にいる状態でシャッター音を確認することが難しいからだ。そこで、私たちがお勧めするのが「離陸前からシャッターを切り続ける」という設定である。シャッター音が聞こえるので、撮影がうまくいっていることが操縦者に簡単に伝わるのだ。

当日の能勢ドローンフィールドの様子

LiAir V70を装着したDJI Matrice300RTK

この日はVelodyne社製VLP-16を搭載したLiAir50Nのテストも並行して行った。 

DJI社Matrice300RTKのコントローラー。今機からマウスでの操作が可能となっている。

LiAir V/V70の特長

LiAir V/V70を実際に手に持ってみると、驚くのはその軽さだ。たった約1kgの重量のレーザースキャナを搭載するだけで、最初にご紹介したようなデータを手に入れることが出来る。

「この撮影法が向いているユーザー多いんちゃうか」

弊社ベテラン営業担当も思わずそう独り言をつぶやいていた。
もちろんユーザーによって求める精度は異なるが、この測量方法と相性の良いユーザーが多いのではないか、と感じるからだ。ドローン×点群での高性能な撮影によって、空撮測量でウィークポイントだった樹木の下のモデル化も容易となる。レーザーを照射する撮影法のため、樹木の下の地面にもレーザーが当たり、点群化(=データ化)することが出来るためだ。

現時点(2021年2月)でDJI社も「DJI Zenmuse L1」「DJI Zenmuse P1」の発売を発表している。こちらを楽しみにしているユーザーも多いだろう。空撮での測量でもレーザースキャナ/点群の技術が日々ブラッシュアップされている。それぞれのユーザーが日々模索しながら、それぞれの測量業務に邁進する。新しい技術を導入した後のユーザーはある意味孤独と言えるのではないだろうか。新機材の導入後、他ユーザーの活用方法を知りたいと思うと同時に自社の測量ノウハウを守る必要も出てくるからだ。

データ解析の様子


 今回お世話になった能勢町ドローンフィールドは山々に囲まれた場所だ。

そんな昔ながらの自然豊かな場所で最新の技術を用いた撮影が行われている、その対比が印象的であった。こちらの記事では、GreenValley社製「LiAir V」を使用した実証実験の様子をお伝えした。

今後は今回の2機種V70/N50のデータと、従来の写真測量用の機体Phantom4RTKで取得したデータや、地上型レーザースキャナーRTC360で取得したデータなどとの比較検証を行っていく予定だ。


(株)神戸清光 広報チーム